近年、日本の介護業界では深刻な人材不足が続く中、外国人介護人材(特に特定技能制度による在留者)が重要な戦力として注目されています。出入国在留管理庁によると、特定技能外国人介護士の離職率は約10.6%(2025年時点)と報告されており、今後さらなる増加が見込まれています。ただし、離職率が低く抑えられている施設も少なくありません。本記事では、外国人介護人材が離職する典型的な理由を整理し、実際に定着率が高い施設がどのような施策を採用しているのかを具体例とともにご紹介します。これから外国人介護スタッフを受け入れる事業者・施設にとって、現場で活かせるヒントをご提供します。
外国人介護人材の離職理由 〜主な傾向と背景〜
- 在留資格・転職の自由度の変化 特定技能制度で働く外国人は、より良い就労条件を求めて転職しやすく、施設間での人材流出が起こりやすい状況にあります。同じ出身国コミュニティ内で情報共有が進み、集団退職も報告されています。
- 賃金・処遇の不満 他の産業と比較して介護業界は給与水準が低く、時間外勤務や休日取得の難しさがストレス要因となります。特に報酬面に対する期待とのギャップが離職の一因です。
- 職場の人間関係・コミュニケーション不全 日本人スタッフとの意思疎通や文化理解不足から生じる摩擦が、心理的ストレスを高めます。このような職場でのコミュニケーション障害や不公平な業務分担は、離職意向と強く結びついています。
- 指導・上司からの支援不足 外国人スタッフは言語や仕事慣れに関するサポートが重要ですが、それが不足すると孤立感を抱きやすくなります。指導体制の弱さは離職につながりやすい要因です。
定着率が高い施設の取り組み 〜成功事例から学ぶ〜
分野 | 具体的な取り組み例 | 効果・狙い |
---|---|---|
言語・生活支援 | 日本語学習支援、生活制度説明会の実施(法律・制度など) (提供:エデンレッドジャパン) | 外国人スタッフの不安軽減、安心感の醸成 |
異文化理解促進 | 文化交流イベント(母国・日本双方の食文化交流等)を定期開催 (提供:株式会社グローバルハーモニー) | 職場の一体感向上、相互理解促進 |
キャリア支援・成長機会 | 介護福祉士試験の支援、資格取得・キャリアパス整備 (提供:Meiko Global、株式会社ブイエヌサービス) | 職業人生の満足度向上、職場への定着意欲強化 |
組織的サポート・メンタリング | 先輩スタッフや同国コミュニティによるメンタリング体制、面談・相談窓口の整備 (提供:株式会社ブイエヌサービス、myanmarunity.jp) | 精神的サポートと安心感、離職防止 |
上司の倫理的リーダーシップ | 管理職のリーダーシップ強化:公平な業務配分、相談しやすい環境づくり (提供:PMC、ResearchSquare) | 信頼関係を築き、長期就労を促進 |
日本国内における定着支援の背景と政策的視点
厚生労働省や地方自治体でも、外国人介護人材の受入れと定着支援を目的とした政策・制度整備が進められています。介護福祉士養成から継続就労まで一貫体制の構築、環境整備と労働条件改善を組み合わせた総合的対策が提唱されています。
また、国際交流や文化的理解に基づく受け入れ体制構築は、地域包括ケアシステムの中でも不可欠な要素として位置づけられています。
まとめ:外国人介護人材の定着を促進するために
- 離職の主因:賃金・処遇、言語文化の壁、人間関係の課題、指導体制の不備
- 定着の鍵は、「言語・文化支援」「キャリア開発の支援」「仲間や制度による安心感」「管理職の適切な関与」
- 具体的なアクション例:文化交流イベント、日本語や介護福祉士試験のサポート、生活説明会、メンター制度、管理職向け研修など
- 政策面では、一貫した研修から就労、定着まで支援する包括的体制の整備が進む方向にあります
なお、弊社では定期的な訪問により現場スタッフの声を直接ヒアリングし、問題を未然に察知・解決する仕組みを導入しています。さらに、ベトナム人スタッフが常駐しているため、言語面での障壁を乗り越え、本音に近い声をベトナム語で聞き出す体制を整えております。これにより、外国人スタッフが安心して長期的に働ける環境を実現しています。