一般社団外国人介護留学生支援機構 
外国人介護人材の受け入れが進む中で、ここ大阪でも多くの国籍の方々が介護の現場で活躍しています。その中でも近年、特に注目を集めているのが「ネパール人介護人材」です。穏やかで協調性があり、学ぶ意欲が高いといわれるネパール人は、日本の介護現場と相性が良いと感じる施設が増えています。
今後、私たちもネパールの方々の受け入れや支援を進めていく予定です。これまでに他国籍人材の支援で培ってきた経験を活かし、ネパールの方々にも安心して働いていただける体制づくりを目指しています。本コラムでは、ネパール人介護人材が大阪の現場にフィットする理由と、今後取り組むべき支援の方向性について整理します。
1. ネパールの文化的背景と人柄の特徴
ネパールは、ヒマラヤ山脈に囲まれた多民族国家で、数十の民族と100以上の言語が存在する多文化社会です。そのため、幼いころから異なる背景を持つ人々と共存することが自然であり、「思いやり」や「調和を重んじる姿勢」が生活の中に根付いています。
また、ネパールでは家族の絆が非常に強く、親や祖父母を大切にする文化が根づいています。この価値観が、日本の「高齢者を敬う文化」と重なり、介護という仕事に自然に馴染む素地となっています。
ネパール人スタッフの多くは、明るく前向きで、困難な状況でも柔軟に対応する力を持っています。大阪の介護現場で求められる「チームワーク」や「相手に寄り添う姿勢」にも自然に適応しやすい点が、彼らの大きな魅力です。
2. 言語の壁を越える学びの姿勢
もちろん、最初から日本語が流暢というわけではありません。しかしネパール人の多くは学ぶ意欲が高く、特に日本語の習得に対して真面目で努力家です。大阪の施設でも、勤務後に自主的に日本語勉強会を開くスタッフが増えており、実践の中で上達していくケースが多く見られます。
今後、私たちも日本語教育の支援体制を整備し、介護の専門用語や会話表現を現場で自然に身につけられるようサポートしていく予定です。言語を単なるスキルではなく、「人との信頼関係を築くための手段」として育てていくことを大切にしたいと考えています。
3. 大阪の介護現場との相性 ― 人情と助け合いの文化
大阪の介護現場には、もともと「人とのつながり」を大切にする風土があります。職員同士の声かけや、利用者との自然なやりとりが、あたたかい職場の空気をつくっています。
ネパールの文化にも、「困っている人を助ける」「お互いに支え合う」という価値観が深く根付いています。そのため、ネパール人介護人材は大阪の“人情文化”と非常に親和性が高く、利用者にも自然に受け入れられる傾向があります。
今後、こうした文化的な相性を活かし、現場の中でお互いの価値観を理解し合える仕組みを整えていくことが、私たちの支援の中心になると考えています。
4. 定着を支える生活・キャリア支援の方向性
ネパール人介護人材が安心して働き続けるためには、文化理解だけでなく、生活面とキャリア面のサポートが欠かせません。
● 生活面のサポート
大阪での生活に慣れるためには、住居の確保や公共手続きのサポートなど、初期支援が特に重要です。ネパール人の場合、宗教上の食事制限（牛肉を食べないなど）への配慮が必要になることもあります。今後は、そうした文化的背景を踏まえた生活支援を一体的に整備し、地域のボランティア団体やネパール人コミュニティとも連携していく予定です。
● キャリア面のサポート
介護福祉士資格の取得支援や、キャリアアップにつながる研修機会の提供も重視しています。「学びながら成長できる」と感じられる環境を整えることが、長期的な定着を促すカギになると考えています。また、将来的にはネパール語を話せるスタッフを増やし、文化面でも安心できるサポート体制を構築していく予定です。
5. 現場での交流が生む学びと信頼
大阪府内のある介護施設では、ネパール人スタッフと日本人スタッフが月に一度「文化交流ミーティング」を実施しています。この取り組みは、仕事の話だけでなく、家族や食文化、休日の過ごし方など、日常的な話題を通じてお互いを知る時間です。
あるネパール人スタッフは、「日本人の同僚が私の国の料理を一緒に作ってくれたのが嬉しかった」と話します。その日をきっかけに、スタッフ同士の会話が増え、利用者とのやり取りにも笑顔が広がったそうです。
こうした交流は、単なるイベントではなく、職場の信頼関係を築く“きっかけづくり”として大きな意味を持ちます。お互いの違いを受け入れ、尊重し合う雰囲気ができることで、日々の小さな気遣いや協力が自然に生まれる。それが結果的に、介護現場の安定とスタッフ定着の両方を支える力となっています。
6. 多文化共生への一歩 ― 違いを理解し、活かす職場へ
多文化共生という言葉には、さまざまな意味が含まれます。その本質は「違いを受け入れ、活かし合うこと」にあります。ネパール人介護人材の持つ穏やかさや礼儀正しさ、そして家族的な温かさは、日本の介護現場に新しい風を吹き込む存在になるはずです。
私たちは、ネパールの方々の受け入れを通じて、現場に新しい視点と刺激をもたらしながら、働くすべての人が安心して成長できる環境づくりを目指しています。大阪という多様性あふれる街だからこそ、国籍や文化を超えて「支え合える介護のかたち」を築いていけると信じています。
7. まとめ ― ネパールから広がる新しい介護のかたち
ネパール人介護人材が大阪の介護現場にフィットする理由は、単に文化的な相性だけではありません。そこには、共通する“思いやりの心”と“成長への意欲”があります。
私たちは、これからネパールの方々の採用支援・生活支援・キャリア支援を本格的に進めていきます。多文化が共に息づく大阪の介護現場で、互いの違いを理解し、尊重し合える関係づくりを目指して。
青山信明は、これからも介護現場に寄り添い、多文化共生の支援を発信していきます。