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大阪で暮らす外国人の生活費と支援制度 ― 物価高時代に求められるサポートの形と実践ポイント

物価の上昇が続く中、大阪で暮らす外国人にとって、生活費の負担は大きな課題となっています。介護、製造、サービス業などで働く外国人材が増える一方で、「思っていたより生活費が高い」「給料は上がらないのに支出が増えている」といった声も多く聞かれます。外国人が安心して働き、地域に根づいていくためには、就労支援だけでなく生活そのものを支える仕組みが欠かせません。本コラムでは、大阪で暮らす外国人の生活費の現状と、行政・企業・地域が連携して進めるべき支援の形について整理します。

1. 大阪での外国人の生活費の現状

大阪は日本の中でも外国人が多く暮らす地域のひとつです。
大阪府の統計によると、外国人住民数は20万人を超え、特にベトナム・中国・ネパールなどの出身者が増加しています。
一方で、物価や家賃の上昇が生活を直撃しています。

● 生活費の平均イメージ(単身の場合)

項目平均費用(大阪市内)備考
家賃約5~7万円ワンルーム・シェアハウス含む
食費約3~4万円自炊中心でも円安で上昇傾向
光熱費・通信費約1.5~2万円電気・ガス・携帯代など
交通費・雑費約1万円前後定期代・消耗品など
合計約10~14万円生活水準による差あり

このように、単身でも月10万円以上が必要です。
一方で、特定技能や技能実習などで働く外国人の平均月収は20万円前後。
仕送りや学費返済を行う人も多く、手元に残る金額は決して多くありません。


2. 「生活費の高さ」が生む課題

生活費が上がる中で、外国人材が抱える課題は単なる経済的負担にとどまりません。

① 生活の不安が離職につながる

「貯金ができない」「日本で暮らすのが大変」と感じると、せっかく採用しても帰国や転職につながることがあります。
特に介護現場では、生活面の支援が定着率に直結する傾向があります。

② 文化・情報の壁による支援制度の未活用

大阪府や市町村には生活支援や補助制度が多数ありますが、外国人がそれを「知らない」「申請方法がわからない」ままになっているケースが少なくありません。
情報はあっても、言語や文化の壁が利用を妨げています。

③ 社会的孤立のリスク

生活費を抑えるために極端に節約し、人との交流が減ってしまうこともあります。

大阪のように地域コミュニティが活発な場所だからこそ、孤立を防ぐサポートが重要です。

3. 大阪で活用できる生活支援制度・補助の例

大阪では、外国人住民も利用できる公的制度や民間の支援が複数あります。その一部を紹介します。

支援名内容窓口・対象
外国人生活相談センター(大阪国際交流センター)生活・労働・教育・医療などの多言語相談(電話・来所、無料)窓口:大阪国際交流センター(大阪市天王寺区)
対象:大阪市在住・在勤の外国人など。
居住支援(住宅セーフティネット/居住支援法人)住宅確保要配慮者(外国人を含む)に対し、入居に関する情報提供・相談・見守り支援を実施。窓口:大阪府/大阪市の担当部署、居住支援法人
対象:住宅確保要配慮者(詳細は各法人・自治体で異なる)。
生活福祉資金貸付制度(大阪府社会福祉協議会)低所得・障がい者・高齢者世帯などに生活資金を貸付。外国人は在留資格等に関する要件あり。窓口:大阪府社会福祉協議会 生活支援部
対象:要件を満たす世帯。詳細・審査内容は窓口へ。
医療通訳(大阪府:24時間多言語遠隔医療通訳)府内の医療機関・薬局向け遠隔医療通訳サービス。登録した機関で利用可能。窓口:大阪府(保健医療企画課)
対象:府内の登録医療機関・薬局(患者は費用負担なし)。
医療通訳(大阪府立病院機構:ボランティア通訳)府立病院でのボランティア医療通訳を実施(平日診療時間内、事前調整が必要)。窓口:大阪府立病院機構 各病院
対象:同機構の病院で受診する患者。

※制度内容・受付状況・対象者は年度により変動します。申請・利用前に必ず各公式サイトで最新情報をご確認ください。

4. 企業・施設ができる生活サポートの工夫

行政の制度に加えて、企業や介護施設が生活支援をどのように行うかも重要です。

● ① 住まいのサポート

外国人が一番困るのは、家探しと契約手続きです。
保証人が見つからない、契約書の日本語が難しいなどの理由で入居できないケースがあります。
企業が連携不動産会社を紹介したり、社宅制度を整えることが大きな安心につながります。

● ② 家計サポート・相談体制

節約や送金の相談、日本での税金・年金制度の説明なども大切です。
大阪府内の一部施設では、月1回「生活相談デー」を設け、通訳とともに支出管理の相談を受け付けています。

● ③ 食文化への配慮

物価高の中でも「食」は生活の基盤です。
宗教上の理由で避ける食材があるスタッフには、配慮や共有ルールを設けるとトラブルを防げます。
たとえば、「共用の冷蔵庫に宗教別ゾーンを設ける」などの工夫も現場で効果を上げています。


5. 生活の安定が“定着”を生む

大阪の介護・製造現場では、「生活が安定したスタッフは長く働く」という共通点があります。
これは給与額だけでなく、安心して暮らせる環境があるかどうかが鍵になっています。

ある大阪市内の介護施設では、外国人スタッフのために地域交流会を開催しています。
月に一度、利用者や職員が持ち寄りの料理を囲んで話す時間を設け、文化や言語を超えて交流。
「生活の話ができる場所があることで、仕事の悩みも話しやすくなった」という声が聞かれています。

このように、生活支援=人間関係の支援でもあるのです。


6. これからの支援に求められる視点

今後、物価上昇が続く中で、外国人の生活支援は「経済支援」だけでは不十分です。
次の3つの視点が欠かせません。

  1. 情報の多言語化と届け方の改善
    支援情報をSNS・動画などを通じて発信し、外国人がアクセスしやすい仕組みに。
  2. 地域コミュニティとの連携
    行政・企業・NPOが連携し、相談や同行支援の“顔が見える関係”を築くこと。
  3. キャリアと生活の両立支援
    単なる生活安定だけでなく、「日本での将来設計」を描けるサポートが定着を後押しします。

7. まとめ ― 「暮らせる安心」が働く力を支える

物価高や生活費の上昇は、一時的な課題ではなく、今後も継続的に向き合う必要があります。だからこそ、支援のあり方も「制度を紹介して終わり」ではなく、日常の中で息づく支援へと進化させていくことが大切です。たとえば、地域の商店街やボランティア団体が外国人住民と協働してイベントを開いたり、近隣の学校や自治会と連携して文化交流の場を設けるなど、地域の温かさを支援の一部として育てる発想が求められます。

大阪の強みは、人と人との距離が近いこと、そして「おおきに」「まいど」と声をかけ合う文化です。行政の支援に加え、企業や地域が持つ人情の力を組み合わせることで、外国人が「大阪に来てよかった」と感じられる社会が生まれます。
つまり、支援とは制度ではなく関係の積み重ねであり、その積み重ねこそが、外国人材の定着と地域の持続可能性を支える原動力になると思います。


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